ものづくり補助金

中小企業の経営革新のための設備投資を支援する制度に「ものづくり補助金」があります。

ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)について、シンプルに概要を紹介いたします。

1 制度概要

1-1 目的

ものづくり補助金の目的は、中小企業が経営環境の変化に対応できるよう設備投資等を支援するものです。
働き方改革や人件費の高騰などにより中小企業を取り巻く環境の変化は厳しさを増しています。
この経営環境の変化に対応するためには、いままでどおりの経営のやり方ではなく、経営革新が必要です。

経営革新につながる新商品・新サービスの開発や、新たな生産方法、サービスの提供方法を実現するための設備投資等に対する支援です。したがって、設備の更新などこれまでと同様の事業を継続することに対して支援するものではありません。

1-2 採択率

ものづくり補助金は、申請したすべての企業が受けられるものではありません。
平成24年度から前回までの採択率は、約4割です。
毎年度約20,000社の応募がある中で、約8,000社が補助金を受けられていることになります。逆に約12,000社は、申請したにもかかわらず採択されません。採択されない企業のほうが多いことも認識しなければなりません。

1-3 手続きの電子化

応募申請にあたっては電子申請システムを利用して行うこととなっています。
事前にgBizIDを取得し、電子申請サイトから申請しなければなりません。

2 補助率・補助額

2-1 補助率・補助額

補助率は原則として1/2です。小規模企業については2/3となります。補助対象経費に補助率を乗じた額が補助金として受給することができます。
ただし、補助金の上限は、750万円~3,000万円です。

補助率や補助金の上限額は、申請類型や従業員の人数によって異なります。

 

2-2 補助対象経費

補助の対象になる経費は、主に機械装置・システム構築費になります。補助事業のために必要とされる経費を補助するもので、この補助対象経費についても、いくつか注意しなければならない点があります。

設備投資については、50万円以上の機械設備等を取得します。設置場所の整備工事や基礎工事に要する費用は対象経費とはなりません。また、自動車やパソコンなど汎用性があり、補助事業以外の用途で使用できるものは原則として認められません。

なお、採択後、機械設備等の選定にあたっては複数の見積書を取得する必要があります。

3 主な要件

ものづくり補助金は、事業計画を策定し、優れた事業を補助対象として採択します。
該当する事業として、対象となる企業規模や事業の要件を定めています。主な対象事業の要件を説明します。

3-1 補助対象者

補助対象者を中小企業者としています。大企業が多くの株主となっている、いわゆる「みなし大企業」は補助対象者となりません。

3-2 補助対象事業

補助対象事業の要件として、次の事項を定めています。

3-2-1 事業実施期間

交付決定日から10か月以内を事業実施期間として、事業計画を実施しなければなりません。事業計画のゴールを定め、10か月以内に完了させます。

3-2-2 事業計画

3年~5年の事業計画を策定し、従業員に表明することを求めています。事業計画の内容は、その計画期間において次のすべてを満たすものとします。

●給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること。
●事業場内で最も低い賃金を最低賃金プラス30円以上の水準にすること。
●事業者全体の付加価値(営業利益+人件費+減価償却費)を年率平均3%以上増加させること。

その他、事業計画書の作り方はこちらをご覧ください。

3-2-3 該当しない事業

該当しない事業として10項目あげられていますが、そのうち特に注意すべきものを説明します。

●他の補助金の制度と重複している
計画した事業について、他の補助金も受ける場合がこれにあたります。
例えば、導入しようとする設備について、他の補助金の受給が決まっているなどの場合、重複して受けることができないようになっています。

●事業の主たる部分を外注する
事業を実施する中で、その主たる部分を他社に外注したり、企画だけを行ったりする事業については対象外とされています。
例えば、設備を導入するのは申請企業であっても、実際にその設備を利用して事業を行うのが他社の場合などは対象外となります。

●重複案件
一回の応募期間に複数の事業を申請することはできません。また、他の企業の事業計画と極めて類似している場合も補助対象外となります。他社の事業計画をコピーし、ほとんど同じ内容になる案件があるようですが認められません。

4 審査ポイント

補助金に応募するためには事業計画が必要となります。ものづくり補助金についても同様です。審査項目を意識した事業計画書を策定することが重要になります。

ものづくり補助金は、補助対象事業としての適格性、技術面、事業化面、政策面を審査項目としています。そして、成長性加点、政策加点、災害等加点、賃上げ加点等を加点項目として審査し、採択企業を選びます。

簡単にいうと、応募要件を満たしており、経営革新としての技術が優れているか、新たな技術・サービスなどが売れて事業として成立するかを判断するものです。

あわせて政策に合った内容であれば加点されるといった仕組みです。

減点項目もあります。
過去3年間にものづくり補助金を含む類似の補助金の交付を受けている場合には、その回数に応じて減点されます。

5 手続きの流れ

補助金の申請から受給まで多くの次の各手続きが行われます。また、補助金受給後においても報告義務が課されます。

5-1 事業計画申請

事業計画書を策定し電子申請を行います。
事業計画書に記載する主な内容は、「補助事業の具体的取組内容」「将来の展望」「会社全体の事業計画」です。
それぞれの記載内容は次のとおりです。

5-1-1 補助事業の具体的取組内容

・今までの自社での取組みの経緯・内容
・補助事業で機械装置等を取得しなければならない必要性
・課題解決のための工程ごとの開発内容
・具体的な目標とその達成手段
・事業計画と「中小企業特定ものづくり基盤技術の高度化に関する方針」または「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性
・他者との差別化、競争力強化の具体的な方法(実施体制など)

5-1-2 将来の展望

・事業化後の具体的なユーザー、マーケットおよび市場規模
・事業化の目標時期、売上規模、量産化時の製品等の価格

5-1-3 会社全体の事業計画

・会社全体の事業計画(計数計画)の算出根拠

事業計画書の書き方についてはこちらをご覧ください

5-2 審査・採択

申請書や事業計画、添付書類をもとに詳細な審査が実施されます。
審査の結果、採択者に対して採択決定が通知されます(不採択の場合も通知されます。)。

5-3 交付申請・決定

補助金を受けるための手続きを行います。(交付申請)
事業計画申請で提出した事業計画をより詳細に計画書として提出するものです。
その内容が認められると交付決定が通知されます。

5-4 事業実施

計画に従い事業を実施します。
事業内容を変更する場合は、事前に所定の手続きが必要となります。
補助金の対象となる経費については、領収書等の証拠書類はすべて保管することが重要です。

5-5 実績報告

実施した事業の内容や経緯を報告するものです。
補助金の対象となる経費について、領収書等の証拠書類を添付し、実績報告書を作成し提出します。

5-6 検査・確定

実績報告書に基づき実施状況の検査を受け、補助金額の確定を受けます。
原則として、実地調査が行われます。

5-7 補助金請求・入金

補助金の請求を行い、入金を受けます。

5-8 事業終了後

補助金の対象となる領収書や証拠書類は、補助事業の終了後も保管しておく必要があります。
定期的な事業の状況報告が必要となります。

6 負担軽減のご案内

制度を活用するにあたり、事前に事業計画(賃金計画などの人事計画を含む)の策定や内部規定の整備が必要となります。
それらへの対応には士業をはじめとしたコンサルタントなどの専門家の活用が有効です。
専門家利用について、他の制度を利用することで負担が軽減される可能性があります。
弊社には経営コンサルタント(中小企業診断士)のほか、社会保険労務士、行政書士が在籍しており多方面から負担軽減の提案をさせていただいております。

詳しくはこちらをご覧ください
詳しくはこちら

最終更新日:2022/11/9